アマチュアバンド取材記1~ノーザンライツ~

少し遅れてスタジオに入ると、重いドアを開ける前から

スネアと乾いたホーンの音が微かに響いています。

 

本日の場所は中崎町にある、スタジオ246

ドア越しに漏れ聞こえてくる微かな楽器の音に

思わずドアの前で立ち止まり、わくわくしながら少しの間聞き入ります。

せーので勢いよくレバーを押し上げると

その瞬間に音の波がうわっと広がり、

演奏と共にメンバーの皆さんが暖かく出迎えてくれました。

 

 

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練習前の音出しの段階から、全員がリラックスしているのがわかります。

 

「その前は1年以上空いたからね」

できるだけ邪魔をしないようにと、入り口近くで

ゴソゴソとカメラのセッティングをしていると、あっちゃんこと中村さんが

「おー」

と声を掛けてくれました。

あっちゃんはベース担当。大きな体を細かく動かしては

全体をまとめる、気配りの人です。

 

久しぶりの音出しとは思えないな、と考えていると

「今日は1か月ぶりの練習だけど、その前は1年以上空いたからね」

と教えてくれました。

 

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 かつてノーザンライツとして活動していたバンド

今日ご紹介するバンドは、かつて「ノーザンライツ」という名前で

精力的に活動していた、スティーリー・ダンのトリビュートバンドです。

私が前回書いたアマチュアバンド取材のお知らせの中で、

「部屋を片付けろ」という名曲を生んだエピソードを紹介したところ、

それを読んでくださっていたようで、

「いつでも遊びにおいで」と誘っていただき、今回の取材が実現しました。

 

元々演奏技術も確かで気さくな方達ばかりで、

部外者の私がお邪魔しても、オープンに受け入れてくれる懐の深さがあります。

 

そんなバンドが、なぜ1年以上もブランクを作ったのか。

なぜバンド名の前に「かつて」と付けなければならないのでしょうか。

 

メンバー構成が少し変わっていた

前回私が彼らのスタジオ見学に行ったのは約3年前。

その時とは、メンバー構成が少し変わって、

メインボーカルのやなちゃんに加えて

新たにまこっちゃんという、可愛らしいボーカルの女の子が入っていました。

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ツインボーカルで行われたノーザンライツのライブは私も観たことがありますが、

2人ともその頃より、更にぐっと距離が近づいたようで

コーラスワークの息も合っています。

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ただ、3年前のスタジオにも、ツインボーカルでのライブにもいらした

ギター担当の方が、今はいません。

 

ノーザンライツのメンバー構成について

ノーザンライツが結成されたのは6年前。

キーボードのナンさんとドラム担当兼リーダーのリョウさん、

ギターのツッチーさんに、ナンさんが声掛けしたあっちゃんの

計4名がスターティングメンバーでした。

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その後ボーカルのやなちゃんとサックスのハマさんが加わり、

初期のノーザンライツ誕生となります。

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練習風景を切り取る:My Dear Life

この日のスタジオでは、初めて演奏する

My Dear Lifeという曲を中心に練習が進んでいきました。

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渡辺貞夫とブレンダ・ラッセルが交互に織りなすパートが美しいこの曲は

まこっちゃんのリードとハマさんのサックスがメインになっていて、

今までのノーザンライツには珍しい構成です。

 

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時折譜面を見て、各自のパートを確認したりしながら、

徐々に完成度を高めていきます

(リーダーのリョウさんが、背後で別の意味で高まっています)。

 

写真で見る練習風景

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いかがでしょう、締めるところは締めつつ、終始和やかなムードなのが

お伝えできているでしょうか。

1回目の練習段階からかなり美しい仕上がりで、当のご本人達も

「初見でやってるとは思えないね」とご満悦のようす。

 

リーダーのリョウさんは、演奏技術はもちろんですが

とても優しく暖かい方で、

カメラを向けると様々なポーズを取ったり

エッチなDVDを出してきたりと、神級のサービス精神で応じてくれました。

気配りのあっちゃん、人事と企画力抜群のナンさんをして

「カリスマ性のある人」と称されるのもうなずけます

(ほめ過ぎると、全力で下衆い発言を連発してくるあたりがまたお茶目です)。

 

選曲次第では、このメンバーだけでも充分ライブを行えそうに感じたので

「ギター抜きでライブをやる予定はないんですか?」と伺ってみたところ

 

それまで和やかだったバンドの雰囲気が、

少しだけ寂しげに変わったような気がしました。

 

「いや、ギターはいるよ。このメンバーだけでライブはしないかな」

皆口々にそう言います。

練習の終了時間が、近づいています。

 

ギター不在で空いたブランク

ここまで完成度の高い演奏ができて、雰囲気もとても良いバンドであるにも関わらず

1年以上ブランクが空いた原因は、ギターの不在です。

ギターのツッチーさんが病に倒れ、参加することができなくなってしまいました。

ノーザンライツというバンド名に「かつて」とつく理由も、ここにあります。

 

自己主張が強くなりがちなギターが多いなか、

全員の音を聞きつつ、要所を掴んでは

繊細さと太さを併せ持つかっこいいギターを弾いていた彼の不在は、

心優しいメンバー達が活動を止めてしまうのに十分過ぎる喪失でした。

 

ギター不在のまま1年が経ち、練習に集まってはいるものの

ノーザンライツとしてライブをする予定はまだ決まっていません。

でも、このまま活動を止めることはツッチーさんを含めて、

きっと誰も望んでいないでしょう。

「またあの楽しい時間が再現できるなら」という思いから、

かつてノーザンライツとして活動していたバンドは

今少しずつ、ゆっくりと動き始めています。

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メンバーの声

あっちゃん:「ロックしか知らなかった俺に、スティーリー・ダンみたいな世界があることを教えてくれた。声を掛けてくれたナンさんには感謝している」

ハマさん:「僕は1つのバンドに長く居ないことで有名だったのに、ここだけは5年もいるからね。周囲の人は皆びっくりしてますよ。自由に演らせてくれて、それをいいと言ってくれるから居心地がいいね」

やなちゃん:「リョウさんに声を掛けてもらって、このバンドに巡り合えてよかった。一生ものの出会いだと思ってる」

まこっちゃん:「最初は1回だけのお手伝いのつもりが、気が付けば3年経っていました。必要と思ってもらえているのが嬉しいです」

ナンさん:「なんだかんだ言っても、このバンドはリョウさんのリーダーシップが効いています。彼の人柄は素晴らしいですよ」

リョウさん:「あ、あのカップル見てみ、あれ今ホテルから出てきたとこやで。このDVDな、これはエロいで。最高やで!」

 

ノーザンライツでは、只今ギターを募集しています。

メンバーの人柄と演奏技術はお墨付き。

練習後の飲み会が楽しいのも、大きなオマケです。

ぜひ一度音合わせしてみたい、という方は

Twitter: @nozanlaituまでコンタクトをどうぞ。

 

※2018年6月追記:

ノーザンライツのベース担当様より、

めでたくギターの方が決定した旨

ご報告をいただきました。

今後とも益々のご活躍をお祈りしております。